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佐賀県唐津の近代日本建築を代表する辰野式建築「旧唐津銀行本店」

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    朝鮮大陸の文化と日本を結ぶ、交易の門戸として賑わう港町だった佐賀県・唐津市。古い歴史から、どんどん新たな歴史が生れていきます。
    佐賀県唐津市にある近代日本建築「旧唐津銀行本店」をご存知でしょうか。東京駅の建築で有名な辰野金吾が監督し作られました。ひときわ存在感を示す旧唐津銀行本店を徹底解説します!

     

     

     

     

     

    日本を代表する近代日本建築家、辰野金吾の生涯とは

     

     

     

     

    “東京駅”や“日本銀行本店”を始めとした国内をはじめ、海外の有名建築の設計に携わった日本を代表する建築家・辰野金吾。彼は1854年に、辰野金吾は現在の佐賀県唐津市に1854年8月22日に生まれました。

     

     
    そうなんです。

    辰野金吾の出身地である佐賀県唐津市。故郷の唐津に唯一残る辰野式建築が今回ご紹介する「旧唐津銀行本店」です。

     

     

     

     

    銀行に訪れる前に辰野金吾について少し勉強しましょう!

     
    辰野金吾は、17歳の時に藩の英語学校に入学しました。
    辰野は、1873年、26歳の時に工部大学校(東京大学工学部)を、首席で第一期生として卒業しました。その後イギリスへ約3年間留学し、建築の実務を学びます。その後帰国し、近代日本建築の礎を築く存在として、東京駅や日本銀行本店などを設計しました。

     

     

     

     

    辰野金吾は建築家として日本銀行と中央停車場と国会議事堂の3つの建築設計をしたいと語ったと伝えられています。国会議事堂は、コンペの第一次審査まで関わったものの、1903年3月25日に赤坂新坂町の自宅で享年66歳で息をひきとりました。

     

     

     

     

    そうした中で1885年に建てられた「旧唐津銀行本店」。さっそく訪れてみましょう。

     

     

     

     

    近代経済発展のカギを探す旅 ~旧唐津銀行本店~を訪ねる

     

     

     

    <写真01_外観>

     

     
    JR唐津駅から徒歩約10分の「旧唐津銀行本店」を訪れました。
    1885年設立、翌年に開業した唐津銀行。
    26歳の若さで初代頭取となった設立者の大島小太郎は、唐津の経済に寄与するだけでなく、呼子県道・唐津鉄道や唐津港の開発や電気会社の設立に至るまで幅広く唐津の発展に貢献しました。

     

     
    <写真02_佐賀銀行>

     

     
    1955年に佐賀興業銀行と合併し、佐賀銀行に名称を変え、建物は「佐賀銀行唐津支店」となりました。
    立派な本店のこの建物は、東京駅丸の内駅舎・日本銀行本店など生涯で200を超える設計を行った工学博士・辰野金吾の監督のもと、弟子にあたる田中実が設計を担当し1912年に建立されました。

     

     

     

     

     

     

    <写真03_外観2>

     

     
    赤煉瓦に白い御影石が混ざり、屋根の上に小塔やドームが載り王冠のようになっているのが分かりますでしょうか。
    このデザインは、辰野金吾がイギリス留学時代に流行したヴィクトリア様式の一つであるクイーン・アン様式を日本風にアレンジしたもので「辰野式」と呼ばれています。
    とても美しいデザインの外観を見るだけでも、どんな歴史が詰まっているのかわくわくしてきました。

     

     

     
    <写真04_入口付近>

     

     
    さっそく、歴史の扉を開いて中へ入ってみましょう!

     

     

     

     

     

     

    <写真05_カウンター>

     

     

     
    中に入ると、今の銀行では見られない木製カウンターがあります。
    木製カウンターには美しい飾り格子が施され、白い柱にはアカンサス(地中海オオアザミの葉)の柱頭飾りがありとても華やかです。

     

     

     

     

     

     

     

    過去と現在そして未来が繋がる 唐津銀行の歴史を繋ぐ人々の想い

     

     

     

     

    2002年に唐津市指定重要文化財に指定、2008年から保存修理工事がなされた旧唐津銀行本店。

     

     
    <写真06_柱アップ>

     

     
    カウンターと柱は、その際に創建当時の姿に復元されたもので、柱にこのような装飾がされているのは、鉄骨を見せないようにする工夫で東京駅にも同じ工夫がなされているそうです。
    ギリシャでも柱装飾として使われるアカンサスは、なかなか枯れないその生命力の強さから、繁栄の証となっています。

     

     

     

     

     

     

     

    <写真07_アカンアサス>

     

     

     
    旧唐津銀行の駐車場横の花壇には、唐津焼で有名な中里太郎右衛門さんのお庭からいただいたというアカンサスが力強く根を張っていました。
    このような銀行とは思えないような華やかな装飾や、奥行きをつくるために館内には鏡が4か所に設置されていたことからも、いかに財力をもっていたのかが伺えました。

     

     

     

     
    <写真08_旧金庫室>

     

     
    カウンターの奥には重厚な旧金庫室も残っており、歴史の重みを感じることができました。

     

     

     
    <写真09_金庫>

     

     
    旧金庫室の中には、鉄製で500キログラムもある金庫が昔は4つあったそうです。

     

     
    <写真10_階段>

     
    <写真11_部屋>

     
    <写真12_暖炉>

     
    2階には旧応接室や旧総会室があり、1階と2階で合計9つある石炭暖炉は当時のまま現存しているものです。
    古くから残っているものと、唐津の歴史を愛する人々の声によって新しく復元されたもの。
    そんな新旧が見事に入り混じる旧唐津銀行本店は、まさに過去の歴史が今現在に繋がっていることを伝えてくれる素晴らしい文化財でした。

     

     

     

     

     

     

    旧唐津銀行本店 所在地:佐賀県唐津市 本町1513-15

     

     

     

     

    古い歴史が今も色濃く残る佐賀県・唐津市。町を歩いてみると、いつもテレビや雑誌、観光の際に見ている東京駅の設計者の出身で監修した建物が残るなどと、思わぬところでストーリーの繋がりに出会えることも歴史旅の醍醐味ですね。
    唐津に生き続ける旧唐津銀行本店。是非その魅力を堪能する旅に出かけませんか。