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1300年の歴史を誇る日本一危険な国宝「投入堂」三徳山三佛寺

  • 約1300年前、修験道の開祖 役小角(えんのおづぬ)によって開かれた鳥取県三朝にある三徳山。
    断崖絶壁に立つ三徳山投入堂は、日本一危険な国宝として知られています。
    今回は三徳山参道・投入堂へつづく行者道を行き、命を清める六根清浄(ろっこんしょうじょう)を目指します。

     

     

     

    蓮の花びら伝説からはじまった修験道の聖地 三徳山の歴史をたどる

     

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    日本一危険な国宝といわれる、三佛寺奥院(投入堂)が有名な三徳山。

     

     

    修験道の聖地として、約1300年前より栄えた山です。
    そのはじまりは、語り継がれている役小角の伝説にあります。
    706年、修験道の開祖 役小角が、「神仏のゆかりのあるところへ落としてください」と言い、空に3枚の蓮の花びらを投げました。
    3枚のうち1枚が、三徳山へと舞い降りて、三徳山に修験道の行場が開かれたと言われています。
    この役小角の伝説は「蓮の花びら伝説」と呼ばれ、今に伝わっています。

     

     

    三徳山開山から約150年後の849年、慈覚大師(じかくだいし)が、お堂を建てて阿弥陀如来・釈迦如来・大日如来の三尊仏をお祀りしました。
    そのお堂は三徳山三佛寺と名付けられ、天台密教の道場として信仰を集めます。
    そして戦乱の世・維新と激動の時代を経て、現在に至るまでゆるぎない信仰が続いてきました。

     

     

    三徳山の修験道は、三徳山参道や投入堂へとつながる「行者道」を通じて体感することができます。
    人間の根幹である「目・耳・鼻・舌・身・意」の六根を清める「六根清浄」を行う行者道。
    険しい道のりですが、最後の投入堂にたどり着いた時には「命」から清らかになっています。

    今回は「六根清浄」を目指して、修験道の聖地 三徳山へと参りしょう。

     

     

    六根清浄を目指して いざ三徳山修験道をいく~順路・注意点~

     

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    では、「六根清浄」を目指して修験道の聖地 三徳山へと向かいます。

    まずはバスに乗って、最寄りとなるバス停「三徳山参道入口」で下車します。
    参道入口から三佛寺本堂まで急な階段が続き、さっそく修験道の厳しさを体感。

     

     

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    こちらは三佛寺本堂までの道のりにある「輪光院(りんこういん)」です。
    入り口横にある「百八煩悩転生大念珠」で、念じながら念珠を下へ引き、玉が落ちることで厄を払うことができます。
    静かな空間に玉が落ちるカチッという音が響きわたり、心が落ち着きますよ。
    「六根清浄」の修行前に厄払いをしておきましょう。
     

    階段を上がっていくと、六根清浄の「鼻」にあたる本堂が見えてきます。
    本堂には、創建時の阿弥陀如来像が秘仏として安置されています。
    そばに立つ神木・シャクナゲの甘い香りに包まれながら、線香をあげて気を静めましょう。

     

     

     

    本堂の隣にある案内所で、修行の手続きをします。
    案内所の方に、注意事項の確認・服装のチェックをしていただきます。
    事前にHPで注意事項を読んで準備してないと、参拝の許可が下りないことも。
    ここでは特に気を付けたい注意事項3つを挙げました。
    ・必ず2人以上で登ること
    ・金具の付いていない靴、登山靴が好ましい
    ・受付は8:00-15:00で、12月から3月は雪のため例年閉鎖
    厳しい修行であるからこそ、安全もしっかりと確保します。

     

     

     

    準備万端にして進んでいくと、上からクサリが垂れている急坂「クサリ坂」が現れます。
    クサリを頼りによじ登っていく、修行道の「難所」です。

     

     

     

    難所の先に待っているのが、六根清浄の「身」を代表する文殊堂。
    クサリ坂を登り切り、心地よい疲労を感じています。
    その心地よさの中で、文殊堂から青々とした山、日本海を見渡すと心が洗われるよう。
    焦らず、ここですこし休憩もかねて景色を楽しみましょう。

     

     

     

    文殊堂を後にして、巨岩を登っていくと鐘楼堂に着きます。
    ここで鐘をついて、鐘の音で「耳」を清めます。
    いったいここまでどのように鐘が運ばれたのか、いまだ謎のままだそうです。

     

     

     

    いよいよ投入堂までラストスパート。
    くれぐれも登られる際は無理をしないようにしてくださいね。

     

     

    六根清浄の最終地点 日本一危険な国宝 投入堂へ

     

     

    三徳山の「六根清浄」の修行もいよいよラストスパート。
    修行道の最終地点、国宝 投入堂です。
    昔、修験道の開祖 役小角が、修行によって習得した不思議な力を使ってお堂を手のひらに乗るほど小さくし、大きな掛け声とともに投げ入れました。
    そうして断崖絶壁にできたお堂は「投入堂」と呼ばれ、現在まで六根清浄の修行における最終地として神聖視されています。

     

     

    投入堂までの参道はなく、投入堂よりも下の位置で参拝する形です。
    現存している投入堂は平安時代後期に建てられたもの。
    清水寺の舞台に使われている懸造(かけづくり)ほど複雑な構造を持たず、柱と補強の役割を果たす筋違(すじかい)だけとなっており、宙に浮いているかのようにも見えます。

     

     

    圧倒的な存在感を放つ投入堂の姿を拝むことで「目」が、修行道を終えることで「意」が清められるとされています。

     

     

    ちなみに一説によると「どっこいしょ」は、修行者が三徳山に登っているときに「六根清浄」と唱えていたのがなまったものだそうです。
    疲れた身体を動かすときについつい出てしまう「どっこいしょ」。
    力を出そうと険しい修行道の中では、幾度も「どっこいしょ」な場面があります。
    いつの間にか本来の意味ではなく、もうひと踏ん張りのときに発する語として定着したのかもしれませんね。

     

    谷川天狗堂で三徳豆腐・とちもちに舌鼓

     

     

     

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    最終地点である投入堂を経て、六根清浄を習得した…わけではないのです。
    六根を思い出してみてください。ひとつだけ忘れていませんか。
    そう「舌」です。
    舌は精進料理で「命」をいただくことに思いをよせ、地産地消の食を味わい食文化にふれることで清められます。

     

     

    今回は修行道を終えた後に立ち寄れる「谷川天狗堂(たにかわてんぐどう)」をご紹介します。
    バス停「三徳山参道入口」のすこし先にある、三徳豆腐やとちもちを味わえるお食事処です。

    三徳豆腐は三徳山の水を使って作られた豆腐で、固めでしっかりと豆の味を楽しめます。

     

     

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    こちらは、とちもちが入った「とちもちぜんざい」です。
    とちもちとはトチノキの実を使ったお餅で、ほのかな苦みのある独特の風味が特徴です。
    温かくて甘いぜんざいと、大きくてモチモチなとちもちの苦みが絶妙。
    ぜんざいのアズキは大粒で食べごたえがありました。
    とちもちは三朝の銘菓で、地元の方々にも愛されています。
    持ち帰りもできるので、お土産にもオススメです。

     

     

    三徳山、六根清浄の旅はいかがでしたか。
    険しい修行道を乗り越え、投入堂へたどり着いたときに「命」から清らかになる感動は、一生ものです。
    六根清浄を終えたら、三朝温泉でゆっくりと身体を休めてくださいね。