世界遺産 大田市石見銀山の外港を担った重伝建 温泉津の港町を巡る
島根県の中西部沿岸の入り海に築かれ、世界遺産の石見銀山の外港として発展した港町である大田市。
江戸時代の街並みが残り、温泉町として日本で唯一の重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。
まちなみの形成の歴史とともに街歩きの旅を楽しみましょう。
この記事の目次
温泉町と港町の側面を持つ大田市温泉津 銀鉱山王国の主要港を紐解く
大阪より新幹線を利用し、岡山まで約50分。
岡山からJR伯備線で出雲市駅まで約180分電車で揺られ、さらにJR山陰本線に乗り換え特急で約30分で大田市駅へ。
大田市駅からさらにJR山陰本線で約40分で温泉津(ゆのつ)駅にアクセスが可能です。
温泉津温泉駅から徒歩約15分で温泉津の港町へ着きます。
電車から降り約15分歩くと、レトロな雰囲気が漂う、落ち着いた街並みが広がります。
迫る山と港、そして温泉のまちなみはとても贅沢で移住してしまいたくなるほどに心地よさを感じました。
石見銀山は大航海時代の16世紀に日本の銀鉱山としてヨーロッパ人に唯一知られた存在でした。
ヨーロッパで当時制作されたアジアや日本地図に石見銀山を指して「銀鉱山王国」と記されるほどでした。
そんな王国と呼ばれるほどに栄えた石見銀山を支えたのは温泉津の港町でした。
温泉津は日本海沿岸の主要港となり、戦国時代には沖泊(おきどまり)と一帯的に石見銀山の積出し港として重要拠点となりました。
江戸時代に入り、銀山が天領となります。
すると銀は陸路で広島の尾道へ搬出されるようになります。
しかし温泉津は海上交通の発展とともに銀山への物資拠点の港となり、やがて北前船の寄港地としての繁栄をしました。
中世から近代にかけて温泉津は、石見銀山の外港、毛利水軍の拠点、西日本海の物流拠点、北前船の寄港地などさまざまな形で繁栄したのです。
大田市温泉津 江戸時代から繁栄の証を持つ世界遺産の町並みをたどる
これほどまでに繁栄した石見銀山と温泉津港。
その影響力がわかる歴史を紐解くヒントが町中にあります。
多くの寺社が残されており、それらを支えるだけの経済力がうかがえます。
恵珖寺(えこうじ)は、江戸時代初期の建築物、楼門が残ります。
寺宝として顕如上人の書状が残される西楽寺。
沖泊には、港にむかって懸造(かけづくり)に建つ恵比須神社本殿・拝殿など温泉津固有の特殊な建築物を見ることができます。
寺社を楽しんだ後は多くの文人墨客や代官を癒したとされる温泉津温泉を堪能します。
温泉津温泉には外湯が2つあり、一つが湯治の湯、そしてもうひとつが薬師湯です。
薬師の湯へ訪れてみました。
なんと世界遺産の天然温泉のみならず、日本温泉協会の天然温泉の審査で全項目で最高評価5を取得している100%本物のかけ流し温泉です。
温泉津温泉には約1,300年の歴史があります。
昔から「万病に効果がある」と言われ、原爆治療にも活用された湯治場だそうです。
身体の芯からぽかぽかになりとても気持ち良かったです。
屋上にはテラスがあり、石見地方特有の赤い石州瓦(せきしゅうがわら)屋根の町並みを楽しむことができます。
この町並みはなんと江戸時代からほとんど変わっていないそうです。
港町から温泉町へ 大田市が誇る毛利氏の水軍御三家内藤氏の住宅へ
栄の道にいた石見銀山と温泉津の港町ですが、1918年に小浜地区への鉄道の駅が設けられることにより、海運業は急速に衰退することになります。
その後温泉業のほかに、窯業、漁業が町の産業になりました。
こうした港町としての一面も併せ持ち、時代により変化を遂げ続けたところに温泉津のまちなみの歴史をみることができます。
街並みは切妻造平入で、赤瓦を使用した山陰地方によくみられる民家形式を持っています。
江戸時代後期から、昭和初期までの町屋が多く占めるなかに、屋敷型の家屋と漆喰塗り土藏、洋風の住宅、木造三階建築がいまの街並みに残ります。
その中でも一番に大きな権力が見て取れる住宅があります。
それがこちら内藤家庄屋屋敷。
内藤家は毛利水軍の御三家の一家でした。
当初は現在の広島県西部を本拠としていましたが1570年に毛利元就の命でこの地に配されました。
温泉津港は当時軍事拠点だった為、鵜丸城(うのまるじょう)を築かせ内藤家にこの地を守らせたのです。
1600年の関が原の戦いで毛利家は西軍に組みした為大きく領土を削られ周防国・長門国の2国となってしまいましたが、内藤家は随行せずこの地に土着しました。
江戸時代に入ると内藤家は廻船問屋や酒造業を手懸ける豪商として大きな影響力を保ち庄屋や年寄などの要職を歴任しています。
世界遺産に登録された石見銀山。
その外港を支えた温泉津港の港町を巡る旅はいかがでしたか。
重要伝統的建造物群保存地区に選定されている温泉津のまちなみには、江戸時代から残る風景が今も息づいています。
ぜひ一度、訪れてみてはいかがでしょうか。